五日市を埋め立てた道空と塩屋明神
どんな伝承か
広島市佐伯区五日市町に伝わる。今の五日市町はもと海で、海老山が皆賀まで続く半島だった。それを埋め立てたのが湯蓋道空で、妻の道昌、子の道斉と三人で暮らしていた。道空は大金持ちで、私財を投じて山を切り抜き、土を運ばせて土地を造り、川には水門と堤防を築いた。それが八幡川である。埋め立てた土地は働いた人々に分け与えられた。家の背戸に川が流れたので瀬戸の川という地名がつき、切り抜いた跡に残った小山をほり山と呼んだ。鏡がない時代なので、道空は井戸に姿を映して木に刻んだという。神として祀られたのが今の塩屋明神の祭りである。息子の道斉は人の言葉に背き続けてあまんじゃくとあだ名されたが、墓だけは親の言うとおり津久根島に建てた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。