鵜来島の鉄の巨人と一字一石
どんな伝承か
宿毛市の沖に浮かぶ鵜来島の龍頭山に、剣神社という無格社がある。その由緒によれば、遠い昔、この嶺に全身が鉄でできた巨人が住み、鉄の槽を提げてときおり海辺へ潮を汲みに下りてきた。道でその姿を見た者は悪い気に当てられて必ず死んだため、島民の嘆きとなった。そこへ、枯れかけた桜と橘を法力で蘇らせたほどの徳を持つ阿闍梨が現れ、衆生の苦しみを除こうと壇を築いて折伏の修法を行った。清らかな真砂を選び、一字一石に祈りを込めて法華経を書き写し、結願の日に巨人は跡も止めず退散したという。今も社前の砂の中から梵字を記したものが見つかるという。
原典より
<高木——「弁慶島」柳田——「弁慶島」>鵜来島龍頭山に劔神社という無格社あり。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。