往来手形の加印で拒まれた継ぎ送り
どんな伝承か
天保五年、三城目村の弥衛門が常州行方郡手賀村で病気になり、安駄に乗せられて村継ぎで送られてきた。ところが領境の徳田村から大坝村へ継ぎ送ろうという段になって、大坝村が受け取りを拒んだ。守山領三城目村が在所というが、本人の往来手形には三春町の役人の加印がある、それが解せぬというのである。徳田村は、三春町は川を隔ててすぐ隣であり菩提寺延命寺の証文もある、在所違いということはないと掛け合ったが、大坝村は、そんな病人を受け継げば先々の村が迷惑する、もし疫病だったらどうするのだと言い張って動かなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・昭和中期(推定))
本書は江戸時代の陸奥奥州守山藩領における『御用留帳』を史料とした、近世農村の医療事情と心霊現象の研究である。狐憑きや物付きなどの精神疾患が、祈禱や指籠入れ(座敷牢)によって治療された実例を14件詳述する。天明・天保の飢饉や流行疫病(疱瘡、麻疹、コレラ等)への対応と並行して、乱心者の社会的処遇、責任能力の鑑別問題、欠落(逃亡)との区別が論じられている。