観音に笠を着せた娘と笠森寺
どんな伝承か
冷泉天皇の皇子五条の宮は上総の国守となって東国に下り、供の蔵人清光の妹で箏の名手だった少将の君を寵愛した。宮が都へ召し返された後、少将の君は姫を産んで若くして世を去る。姫は兄夫婦に育てられ、尾野上の十一面観音を篤く敬った。この観音は伝教大師が楠から刻んだものである。やがて後一条天皇の后が亡くなり、全国から美女が募られた。府中へ向かう道すがら、さみだれに濡れる観音へ姫が蓑と笠を着せると、その姿は亡き后と瓜二つで、万寿三年十月八日に入内して桐壺の女御と呼ばれたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。