八房の梅と信玄の墓所
どんな伝承か
川中島の戦のさなか、武田信玄がひどく喉の渇きを覚えて水を求めたところ、供の者は用意がなかったのか、水の代わりに梅を差し出した。信玄が口に入れて噛むと実は八つに割れ、その場に捨てられた実がやがて芽を出して木になり、実を結ぶようになった。ところがこの木は一つの花に八つの実を結ぶ。不思議だというので数年の後に岩窪へ移された。今も岩窪の機山公墓所には八房の梅と呼ぶ梅がある。もとの木の枯株に土地の有志が新しい木を添えて植えたものだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。