曽我十郎の亡霊が告げた信玄誕生
どんな伝承か
昔、大泉寺の住僧が駿河の富士の裾野を通ったとき、急に眠気を催して道端でまどろんだ。夢に一人の男が現れ、自分は富士の巻狩で仁田四郎忠常に討たれた曽我十郎祐成の亡霊だと名乗る。弟の五郎時致は箱根で仏道に励んだ功徳により武田信虎の惣領の子として生まれるはずだ、証拠にこれを持てと言って、竜の目貫の片方を僧に渡した。目覚めると目貫は手元にあった。僧が甲斐へ帰って告げると、折しも大永元年三月に生まれた若子が、もう片方の目貫を左手に握っていたという。信玄は曽我五郎時致の生まれ替わりなのだと語り伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。