網に上がった霊木と虚空蔵菩薩
どんな伝承か
神奈川の能満寺の本尊は虚空蔵菩薩である。正安元年の八月、内海光善という百姓が海で網を曳くと、節だらけの朽木ばかりが掛かって魚は一匹も取れない。捨てても場所を変えても同じ木が上がるので家へ持ち帰ると、娘が突然狂って海へ飛び込み、沖まで走って姿を消した。やがて戻った娘は、あの木は房州清澄の閼伽井で七百年を経た霊木だ、堂を建てて供養せよと口走り、正気に返った。堂が成ると紫雲が下り、朽木は三寸九分の虚空蔵菩薩の姿に変じたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。