印旛沼へ移った見沼の大蛇
どんな伝承か
見沼が開かれて間もないころ、一人の車夫が空の人力車を引いて帰る途中、目の前に現れた美しい女から、成田詣でに行くので千葉まで運んでほしいと頼まれた。車夫は快く乗せて走ったが、印旛沼のあたりで急に車が軽くなった。振り返ると女の姿は消え、座席は濡れて青くさい匂いが立ちこめていた。開発によって棲み処を失った見沼の大蛇が、姿を変えて印旛沼へ移ったのだろうと村人は語り合った。それきり見沼で大蛇を見た者はいないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。