鵜を放った時忠の怨霊と遠妙寺の経石
どんな伝承か
元暦のころ、平家没落に際して平時忠が甲斐へ左遷され、菊島の郷に住んだ。生来殺生を好んだ時忠は、法城山観音寺の寺領が殺生禁断の地であるにもかかわらず、夜ごと鵜を放って魚を捕った。これを憎んだ里人は時忠を岩落の淵で柴漬けにして処刑したが、その怨念は幽魂となって現れ、たびたび人々を悩ませた。文永十一年の夏、この地を訪れた日蓮上人が川原の小石に一字ずつ法華経を書いて沈め、三日三晩の施餓鬼を修すると亡霊は済度された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。