古扇で怪火を消し甲州金を掘る
どんな伝承か
八代郡の岡村に六左衛門という家があり、近郷に知られた身代だったが、大水で屋敷も田畑も流されて落ちぶれた。あるとき息子の玉吉が地の神の夢を見、そのお告げに従って万年橋の下へ行ってみると、古びた扇が一本落ちていた。折しも近くの墓地では夜ごと青い火が燃えるという噂が立ち、日が暮れると誰も近寄らなかった。玉吉は手に入れた扇を頼りに墓地へ出かけ、火の燃える一隅をあおいだところ、炎はふっと消えた。そこを掘ると棺の縄らしいものが現れ、なかには甲州金がぎっしり詰まっていたという。六左衛門の家はこれで以前にも増した分限者になった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。