池の山に身を沈めたさつき姫
どんな伝承か
昔、都から公卿の上臈が主従六人で万沢から山を越えて来て、山上の大池をめざして登り、姫は池際の岩の上に座した。姫の名をさつき姫という。昼夜を分かたず経を読み、従者も唱和して小屋を建て、四、五十日を経たある朝、姫の姿が消えた。里人まで加わって池を探ったが見つからず、水底から懐剣と着衣だけが出た。従者五人は都へ帰らずこの山に留まり、一里ほど下った小久保に住んで姫の忌日を弔った。山を池の山、水の絶えた池を池代と呼ぶ。大暴風雨の折、池代から大蛇が現れて福士川を下ったといい、以来その両岸にさつきが咲くという。姫は池代大明神として祀られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。