饅頭を惜しんだ長者と妙体石
どんな伝承か
昔、武田氏の支族という長者が、江草村の南にある長者ヶ原に屋敷を構えていた。修験者姿の弘法様が巡歴の途中に立ち寄り、折しも拵えていた饅頭を恵んでくれと乞うたが、強欲な長者は、この饅頭は石で固くて召し上がれないと断った。大師は心を察してそのまま立ち去り、のちに家人が食べようとすると饅頭は真の石になっていた。同時に家の水が絶え、災いが続いて長者は一家四散した。ただ一人の姫は牛に乗って茅ヶ岳の麓を北へ進み、牛石窪で自ら死を選んだ。葬られた場所の石碑は妙体石と呼ばれ、婦人の腰の痛みに効くという。殉じた牛も石となり、里人はこれを牛石と呼んでいる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。