宝乗院の乗円坊が選んだ生入定
どんな伝承か
宝乗院の住職であった乗円坊は、二十歳の年に京へ仏道修行に出た。その途中でひとりの尼僧と一夜の縁を結び、帰りに立ち寄る約束をして旅立った。ところが三年の修行を終えた乗円坊は、尼僧のもとへ寄らずに村へ帰ってしまう。待ちわびた尼僧は不安になって武州まで訪ねて来た。二人は人目を忍んで逢瀬を重ねたが、村人に知られるのを恐れた尼僧は大川に身を投げて死んだ。それを知った乗円坊は、生入定という荒行によってみずから命を絶ったと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。