溜池の堤に立ったお糸
どんな伝承か
小倉南区の呼野に、心根の素直な一人の農夫がいた。子がないのを嘆いて観世音に祈り、授かったのがお糸という娘である。その娘が十六になった年は日照りが続いて大飢饉となり、翌年、村人は平尾山の東のふもとに岩清水の湧く場所があるのを幸いに、堤を築いて溜池を造ろうとした。ところが完成間際の大雨で堤は跡形もなく流された。人柱を立てようという話になっても誰も名乗り出ない中、お糸が、継ぎをあてた湯巻をつけている者を立てればよいと言った。あらためると当のお糸がそれで、村人は惜しみ止めたが娘の決意は堅かった。母はのちに剃髪して娘を弔ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第13巻』所収の「文化叙事伝説」全35話(福岡・大分・佐賀・長崎=北九州)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。