百日を待てず開いた三つの玉
どんな伝承か
花本姫は毎夜通ってくる若衆の素性を知ろうと、その袴の裾に麻糸を通した針で三針縫いつけた。翌朝、嫗と小姓を連れて奥山の道を分け入り、倉木の洗原の大松の陰で顔を洗い、鏡山に鏡を掛けて装いを直し、祖母ヶ岳の麓の穴森へ着いた。麻糸は岩窟から現れた大蛇の喉に刺さっていた。大蛇はわれは祖母ヶ岳の神だと名乗り、生まれる三つの玉を百日のあいだ箱に納めておけと告げて死んだ。姫は産ヶ塚で産気づき、小姓の小松も嫗も途中で息絶えた。姫は九十九夜目に箱を開いてしまい、中から高田太郎・臼杵次郎・緒方三郎の三勇士が生まれ出たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。