鱗の小箱を残した穴森の主
どんな伝承か
緒方の田尾に伝わる話である。穴森様の主である大蛇が、美しい若衆に姿を変えて宇田の姫のもとへ通っていた。いくら名を尋ねても答えないので、乳母が糸を通した針を姫に渡し、男の袴の裾に刺すよう教えた。乳母があとを追うと呻き声が聞こえ、覗いてみれば穴森の社の穴の中で蛇体が針に刺されて苦しんでいた。大蛇は乳母に三枚の鱗を入れた小箱を与え、そのまま息絶えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。