主が棲む東浅井の池と片耳のすっぽん
どんな伝承か
葉栗郡浅井村浅井(いまの一宮市)には昔大きな池があり、三つの伝説が残る。東浅井の林平は、一丈もある鯉が枕元に現れ、自分の池に住まわせてほしいと頼む夢を見た。その後、雨の夜に見慣れぬ男が池の近くで火の玉となって飛び込むのを村人が見て、池には主がいると考え埋め立てをためらった。池の主は大蛇ともいい、明治の中頃に松の大木と見えたものが大蛇で、見た人は熱にうなされて死んだ。昭和三年ごろには夜ごと唸り声がして新聞にも載った。また百二十年ほど前、釣り好きの源兵衛が池の蜘蛛に足へ糸を巻かれ続け、怒鳴ると大すっぽんが現れたので片耳を切り落とした。片耳のない怪物を見た貝一と鬼十は発熱して死んだと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。