汁椀を壊して借りられなくなった椀貸池
どんな伝承か
西加茂郡保見村(いま猿投町)大字八草の富瀬池は椀貸池ともいう。祭礼や婚礼、葬式で椀が足りないとき、必要な数を紙に書いて池に投げ込んでおくと、翌朝その数だけの椀が浮かんでいた。ある時、山口村の家が嫁取りで椀を借りて背負って帰る途中、坂道で転んで汁椀を一つ壊した。一つくらいと気にせず足りないまま返したところ、池の中から足りぬぞという不気味な声が聞こえるばかりで、二度と椀を借りられなくなった。転んだ坂は八草から山口村へ越す道で、いまも二の椀坂と呼ぶ。椀貸しの伝説は県下に多く、下津具村では河童が椀を貸すと約束して渕へ逃げた話になり、武節村のお椀渕、品野の椀貸し岩、橋目の猿投塚などにも同様の話がある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。