峠から蹴落とされたよらぎ地蔵
どんな伝承か
東栄町本郷の与良木峠には、もと六体の石地蔵が並んでいた。今は峠から中在家へ通じる道へ移されている。昔、武田勝頼の軍勢がこの峠を押し上がったとき、地蔵は峠から蹴落とされて赤谷の八つ田へ転がり込んでしまった。村人がやっとのことで田から引き上げてやると、地蔵は喜んで、よくしてくれた、これからは本郷へ白水が流れるようにしてやる、つまり米が多くとれる富んだ村にしてやると言ったという。八つ田の名は、峠から落ちた地蔵の首を探し回るうちに田が八枚できてしまったことからついた。この田を女入れず田とも呼ぶのは、地蔵が入った田だから女性を入れないのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。