六月の雪で村を救った田峯観音
どんな伝承か
正月十八、十九日は設楽町田峯の田峯観音の祭日で、毎年村人の奉納芝居がある。昔、四代将軍徳川家綱の頃、村人は幕府直轄の御林だった段戸山から時々木を盗み出して苦しい暮らしの助けにしていた。これが山代官の耳に入り、検分に来ると知らせがあったので、村人は前非を悔いて一同で観音堂に籠った。この難儀を救ってくれたら村が三軒になるまでも祭りに芝居を奉納すると誓って祈願したのである。一方、代官が段戸山の殿の平まで来ると、六月の土用なのに不思議にも雪が降り出し、たちまち全山が白一色に埋まった。こんな寒い所へ木を盗みに来られるはずがないと代官は引き返し、村人は罪人を出さずに済んだ。これが奉納芝居のいわれである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。