北設楽郡に飛び交う天狗たちの火
どんな伝承か
北設楽郡の山あいには天狗の話が多く残る。田口町の御堂山から風越にかけては昔三十六人の天狗が住んだといい、御堂山にその三十六人衆が、添沢に十八人衆の祠が祀られている。花祭の夜に村人が松明を「風越三十六人衆」と叫んで投げ上げると、風のない空を風越の方へ舞い飛んだという。上津具村の折元峠と天狗柵の間には夜ごと怪しい火が現れて分かれたり集まったりし、天狗の夜遊びの火と呼ばれた。天狗柵の大岩の凹みには日照りでも水が絶えず、天狗の手洗鉢として誰も使わない。武節村小田木の猟師は段戸山で天狗の悪戯に遭い、木を切る音や消える猿の群れに怯えて逃げ帰った。花祭では辻堅めの法力が効かないと天狗が暴れ込むと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。