沖の船を止める長興寺のいたずら観音
どんな伝承か
田原市大久保の長興寺は建治元年の建立と伝わる古い寺で、元寇のときには後宇多天皇の祈願所になったこともある。ここの観世音菩薩の木像は、行基がこの渥美地方に残した七体の一つといわれ、もとは寺の裏手、渥美の海が一望できる観音山の頂上にあった。ところがこの観音はいたずら好きで、時に沖を通る船を止めてしまう。寺に苦情が持ち込まれ、とうとう堂を山の下へ下ろした。その後、堂が古くなったので像を本堂へ移すと、観音はまた本堂で荒れ回った。境内に新しく観音堂を造って安置すると、ようやく静かになられたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。