唐の火事を消した応通禅師
どんな伝承か
西尾市の本町にある実相寺は、文永八年に西条城主吉良満氏が建てた古い寺である。永禄三年の桶狭間の戦のとき、住職が今川義元の縁続きだったために織田信長に焼き払われ、のち天正四年に鳥居元忠の手で今の仏殿が建てられた。二代目住職の応通禅師は中国にも留学した高僧で、あるとき坐禅中に突然立ち上がり、いま唐の経山寺に大火が起こった、消火を助けよと弟子や村人を呼び集め、実相寺の建物に水をかけさせた。しばらくして禅師は、皆のおかげで経山寺の火事も収まったと言った。五年ほどのち、唐から使僧が来て先年の加勢の礼を述べ、焼け残った大塔の宝鐸を寄進して帰った。禅師はまた寺の裏庭に井戸を掘らせ、底から釣鐘が現れたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。