龍宮の乙姫が機の管を授けた手櫃ヶ淵
どんな伝承か
旧荒川村日野の荒川沿いに手櫃ヶ淵という深い淵がある。享保元年ごろ、日野宮の下の西という農家の主で、孝行者の樵夫甚兵衛が、淵を眺めながら斧を研いでいて水に落としてしまった。潜って探すうち機を織る美しい女に会い、斧が降ってきて糸が切れたと言われる。そこは龍宮で、女は乙姫だった。詫びる甚兵衛を乙姫は許して三日もてなし、欲しい物を紙に書いて淵に沈めれば貸そうと機の管を三本授けた。家では三年が過ぎていたが、管の糸は尽きず、甚兵衛は村一番の分限者になった。ところが欲深い村人が借りた品を壊したまま返すと、以後は何も貸されず、管の糸も尽きたという。
原典より
山河に富む荒川村(旧中川村)日野の荒川に面した所に、手櫃ヶ淵という深い淵があります。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。