韋駄天六兵衛と即道神社
どんな伝承か
元禄のころ、荒川村の花屋に六兵衛という男がいた。名主に仕え、老いて剃髪し即道と名乗った。並外れた健脚で、祝儀の生魚を江戸で買う役を頼まれた日の夕方には荒川で汗を流していて怠けたと疑われたが、家には生きのよい魚が届いていた。鉄瓶の湯が沸く前に武甲山頂の鐘をつき、腰の絹一反を地に着けずに走ったともいう。安戸の薬師像を失った責めを負うと浦山の山中で像を彫り、坐像では違うと言われて一夜で七尺余りの立像を仕上げた。晩年は常明寺で入定したとされ、その霊を祀るのが即道神社で、誰も読めない爪彫の石が納められている。
原典より
秩父郡荒川村花屋部落に、昔(元禄の頃) 六兵衛という人が居りました。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。