娘々と呼び歩いた父と采女
どんな伝承か
奈良時代のこと、安積郡片平の里に眉目美しい乙女がいた。百姓小糠次郎の一人娘で、母には早く死なれていた。次郎は娘に似せた絵をかいて懐に入れ、野良で眺めながら働いたが、ある日その絵が物凄い風に吹き飛ばされ、家に帰ると娘の姿も消えていた。次郎は酒をあおり、娘々と呼びながら里中を狂い回った。娘は都で采女となっており、次郎は都へ上ったが行き違いとなり、帰る途中で草の露と消えた。里へ戻った采女は父の死を知り、我が家から遠からぬ小池、今の山の井の清水に身を投げたという。清水が濁れば猿沢の池も濁ると伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
郡山の伝説(ふるさとの文化財調査事業・昭和六十一年(1986)刊/監修 大島建彦)
福島県郡山市(旧安積郡・田村郡域、湖南・熱海・三穂田・逢瀬・西田・中田ほか各町)に伝わる伝説を、木/石・岩/水/塚/坂・峠・山/祠堂/家・村/祭礼・行事の八部門に分類して集成する。坂上田村麻呂や阿古陀媛・采女伝説・萩姫、源義家ら前九年の役の人物伝承、淵や池の主・龍神・河童、弘法大師の清水、稲荷・観音・地蔵の霊験、長者伝説や埋蔵金、隠れキリシタンなど、郡山の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を伝承地つきで網羅する。