渕の御殿で機を織る女
どんな伝承か
田村町下行合の見渡神社の境内に四基の鳥居があり、そのひとつの行合神社が御前様を祀るものだという。昔、高倉の羽広に弥五郎という人がおり、その娘は機織がとても上手であった。娘は福原の家へ嫁いだが婚家を嫌って実家へ戻り、父に追い返された。旧三月二十八日の夜、小雪の降るなかを歩き、沼ヶ渕の傍らの大石のくぼみに身を寄せた末、持ち物を残して渕に身を投げた。数年後、行合の宮司松崎家の先祖が渕に落とした鉈を拾おうと水中に入ると立派な御殿があり、絶世の美女が一心に機を織っていた。授かった糸の尽きぬ管を一日で使い切ると管は蛇となって逃げ、渕には美女が水死体となって浮いていたという。
原典より
田村町下行合の見渡神社の境内に四基の鳥居がある。—— 郡山の伝説(ふるさとの文化財調査事業・昭和六十一年(1986)刊/監修 大島建彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
郡山の伝説(ふるさとの文化財調査事業・昭和六十一年(1986)刊/監修 大島建彦)
福島県郡山市(旧安積郡・田村郡域、湖南・熱海・三穂田・逢瀬・西田・中田ほか各町)に伝わる伝説を、木/石・岩/水/塚/坂・峠・山/祠堂/家・村/祭礼・行事の八部門に分類して集成する。坂上田村麻呂や阿古陀媛・采女伝説・萩姫、源義家ら前九年の役の人物伝承、淵や池の主・龍神・河童、弘法大師の清水、稲荷・観音・地蔵の霊験、長者伝説や埋蔵金、隠れキリシタンなど、郡山の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を伝承地つきで網羅する。