地蔵小院と呼ばれた小松寺の沙弥
どんな伝承か
『今昔物語集』巻十七の「沙弥蔵念世ニ地蔵ノ変化ト称フル語」によれば、陸奥国の国府の小松寺に住む蔵念という沙弥は、平将門の孫で壬生良門の子であった。月の二十四日に生まれたため地蔵菩薩の命日にちなんで名づけられ、幼時から仏心あつく、もっぱら地蔵を念じて地蔵小院と呼ばれた。日々夜々、人家の門口に立っては錫杖を振って御名を唱え、宝螺を吹いてその慈悲をたたえたので、発心する人が多く、世人は地蔵菩薩の化身と崇め尊んだ。七十歳におよんだある日、にわかに深山へ姿を消し、二度と人前に現れなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
将門伝説——民衆の心に生きる英雄(梶原正昭・矢代和夫・1966年(昭和41年))
『将門伝説——民衆の心に生きる英雄』は、梶原正昭と矢代和夫が一九六六年に著した平将門の伝説の研究書である。茨城県岩井町をはじめ各地の伝説地の踏査と、縁起・古記録・地誌をもとに、将門の怨霊と調伏、七人の影武者、子の良門や娘の如蔵尼、寵妃桔梗ら落人の行方、後裔を名告る家々、伝説の伝播と文芸化をたどる。序章と三篇からなり、巻末に青森県から鳥取県までの伝説分布と、寺社縁起など関係文献の抄録を附録として付す。