汚い坊主を追い返して涸れた湯
どんな伝承か
足柄上郡山北町の湯元平は、その名のとおり昔は湯が湧いていた土地だった。ある日、村人たちが部落の共同風呂に浸かって畑仕事の疲れを癒していると、通りかかった身なりの汚い坊主が、自分も湯に入れてほしいと頼んだ。村人は、お前のような汚い坊主が入れば湯が濁って後の者が入れなくなると言い放ち、追い返してしまう。するとたちまち湯は冷たい水に変わり、それきり温泉は出なくなったという。著者は、平安以後の大地震や富士の噴火で泉が止まった事実が、この弘法伝説に結びついたと見ている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年))
『神奈川の史実と伝説』は、新聞記者から県政の仕事に転じた小森良章が昭和五十年に著した郷土史の読み物である。倭建命の東征から鎌倉幕府の滅亡までを範囲に、神奈川県内に残る伝説を十一の篇にまとめ、走水の弟橘姫や足柄山の金太郎などを取り上げる。各篇は伝承地を副題に掲げ、伝説とその背景にある史実を結びつけて語り、古事記や吾妻鏡などの記録を引きながら著者の推測も交えている。