ソバを栽培しない村
どんな伝承か
厚木市市島は、鳶尾山のふもとに十戸ほどが固まる小部落で、七戸が関原姓を名乗る。関原姓の家では蕎麦を栽培することが固く禁じられ、破ると災難があるという。言い伝えでは、先祖の関原与一は保元の乱に敗れた落人で、一族を率いて市島にたどり着いた真夜中、疲れて仮眠から覚めると波の音が聞こえ、白波が見えた。海岸に迷い出たと絶望し、敵に捕らわれるより自決しようと、与一らはその場で切腹して果てた。だが白波と見えたのは、山畑一面に咲いた白い蕎麦の花が風に揺れていたのだった。生き残った者がこの地に落ち着き、蕎麦を作らぬと固く誓ったという。
原典より
地名の伝説 二三九解説・索引 巻末—— 神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。