母への孝心で酒が湧いた銭亀の井
どんな伝承か
港区三田、かつて松平家の抱屋敷があったあたりに、銭亀の井という井戸がある。昔この地に貧しくも孝行な子がいて、酒好きの母を思う心が通じたのか、井戸の水が酒に変わったと伝えられる。銭亀とは銭瓶のことであろうと原典は註する。『遊歴雑記』はこれを酒井の一つに数え、馬子が酒の味のする井を見つけたものの、独り占めしようと大きな器へ汲んだところ、井の酒はたちまちただの水に戻ってしまったという異伝を載せている。
原典より
港区三田の旧松平家抱屋敷のあたりに、銭亀の井という井戸がある。—— 武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年))
『武蔵の伝説』は、大島建彦と渡辺千佳子が昭和五十一年に著した伝説集である。埼玉県・東京都と神奈川県の一部にあたる旧武蔵国の伝説を、地誌・紀行・社寺縁起・区市史や『埼玉県伝説集成』などの文献と土地の口碑から集め、項目ごとに出典を添える。『日本伝説名彙』の六部門に家・村と祭礼・行事を加えた八部に分け、巻頭の「はじめに」で伝説の分類の方法を論じている。