鳥の巣の中の髑髏
どんな伝承か
文久三年四月のある日、伝八郎は夕陽の射す森の中を当てもなく歩いていた。目黒から碑文谷へ続く森で、桜の花びらが白い羽虫のように舞い、欅の若葉が薄暗い林を所どころ明るく見せている。杉の梢に鳥の巣があるのを見つけた伝八郎は、当たれば大願成就と決めて足元の小石を投げた。朽ちた小枝と塵がばらばらと落ちるとともに巣の塊が落ちてきて、彼の額をぴしゃりと打った。拾い上げると、灰色の陶器のようなものが小枝に綴じ込まれている。よく見ればそれは人間の髑髏だった。縁起でもないと放り出すと、髑髏は半ば根笹の中に埋まった。梢を見上げても鳥の姿はもうなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ・明治末~大正期(推定))