暗い鉱道で龕燈を提げて呼ぶ死んだ姉
どんな伝承か
東京都目黒区のT・Tさんは、十八歳のとき腸チフスを患い、高熱が一か月続いた後に肺炎を併発し、医者にもう駄目だと言われた。その時、まず病室の壁や天井から伸びる無数の紐か糸のようなもので全身を縛り上げられ、ぎゅうぎゅう引っ張られる筆舌に尽くせぬ苦しみの幻覚を見た。次いで突然、暗い暗い鉱道のようなところへ引き入れられ、そこを歩いていくと、向こうから二年前に死んだ姉が鉱員の使う龕燈をぶら下げ、呼び名の『チーちゃん、チーちゃん』と呼びながら近づいてきた。不思議なことに、画面全体はモノクロなのに龕燈の先だけが赤く光っていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。