悪龍を埋めた岩殿の不鳴の池
どんな伝承か
東松山市岩殿の不鳴の池は、岩殿観音の石段の下から少し離れた所にある。坂上田村麻呂が退治した悪龍を埋めた池で、ここの蛙は鳴かず、もし鳴けば悪龍が現れるという。別の伝えでは、天正十二年に正法寺の住職英俊が伽藍建立の際に閼伽池として掘った池で、なぜか蛙が棲みつかないため「鳴かずの池」と呼ばれるようになったとする。池の中には弁財天が祀られ、傍らの碑には、延暦のころ山中の悪龍が人畜や田畑を害し、東征の途中の田村麻呂が観音に祈って一箭で射殺し、頭を埋めた塚に弁財天を勧請して軍陣弁天と称し、以来池に蛙の声がしなくなったといういわれが刻まれている。
原典より
不鳴の池は岩殿観音の石段の下より少しくはなれた所にある。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。