見沼の蛍の姫と小笛の供養塔
どんな伝承か
昔、見沼のほとりに笛の上手な小笛という少女がいた。初夏の晩、笛を吹きながら沼のほとりを歩くと、遠くから同じような笛の音が聞こえ、次第に近づいてくる。音は古井戸の中からで、のぞくと無数の蛍が笛に合わせて飛び交い、ひときわ大きな蛍が手招きするように先へ飛んだ。小笛が追っていくと竹やぶの中に御殿があり、蛍の姫が迎えて、自分たちは昔この地の城に住んだ一族の女たちで、戦に敗れて見沼に身を投げたが、竜神が哀れんで蛍に変えてくれたのだと語った。姫は自分たちの霊を慰める供養を頼み、村に帰った小笛の話を聞いた人々は大和田に蛍の供養塔を建てたという。今はその場所も定かでない。
原典より
昔、見沼のほとりに、笛の上手な小笛という名の少女が住んでいた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。