佐賀に渡ったお菊の皿とお菊虫
どんな伝承か
番町皿屋敷でお菊が割ったという皿のうち九枚を、肥前佐賀の材木町一丁目に住む池田千六という人がたいそう大事にしまっていた。もとは肥後熊本の長嶺家という真宗の寺にあったものが、思いがけない縁で島原の真宗寺から手に入ったのだといい、青い地に模様の入った珍しい皿で、おそらく支那の青磁だろうと見られていた。持ち主はこれをシカゴで開かれる世界博覧会に出すつもりだったという。また以前、皿を納めた箱の中から、蛍のような姿で毛の生えた虫が這い出してきたことがあり、人々はこれをお菊虫と呼んではやしたてた。九枚のうち一枚は欠けており、欠けた分は東京で誰かが持っているという噂もあった。
原典より
又口碑によれば前年ホーレイとて、螢の様なる蟲の毛生へたるが、右の皿を入れある箱の裡より這ひ出で居りたる由にて、人之をお菊虫と言ひ囃したりとぞ。—— 江戸傳説(佐藤隆三) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。