渡辺綱の産湯と伝わる古井戸
どんな伝承か
三田綱町にあった蜂須賀侯爵邸の地は、渡辺綱の屋敷があった場所だと伝えられ、綱生湯の井戸で知られていた。市内でもっとも古い井戸とされ、いまも清水が絶えず湧いている。狂歌にも詠まれ、井戸替えのたびに底知れぬ深さと遠い昔が思い起こされた。隣の松方侯邸にある老松は綱の駒繋松と呼ばれ、庭の欅も当時からのものと見られている。近くの功運寺の境内には綱塚が残る。綱はもと源姓で、十三のとき伯父の養子となり摂津渡辺の邑に住んだので渡辺を名のった。源頼光の四天王の筆頭として羅生門で鬼女の腕を斬り、大江山の酒呑童子を退治したと伝わる。晩年はこの地に隠退した。綱町の名は綱にちなむ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。