回向院門前の金猫と銀猫
どんな伝承か
およそ百四十年前、回向院の門前に二軒の茶屋が並び、どちらも土で作った大きな招猫を店先に据えていた。東側は金色、西側は銀色に塗り、競い合って客を招いたが、実際は女を置く淫売宿であったという。東側の東屋は主人の弥平が博奕打ちで、女房のお綱は客あしらいのうまい女だった。両国村松町の古着屋の番頭八郎兵衛はお綱に入れあげ、店の大金を使い込んで発覚する。身を投げようと両国橋にもたれていたところへお綱が通りかかり、互いに世を儚んで家へ引き返し情死した。花柳界が招猫を飾る習わしはここから起こったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。