皮を煎じて縁を切る板橋の榎
どんな伝承か
板橋の下板橋、道端に高さ二間ほどの枯木の株が残る。名高い縁切榎の残骸で、二十年ほど前の火災で枯れたものだという。江戸会雑誌によれば実は欅で、幹の朽ちた空洞に第六天神の小祠を安置し、神木として注連を掛けていた。この木の皮を剥いで粉にし、あるいは煎じて縁を切りたい相手に密かに飲ませると必ず効くとされ、皮は根元から六、七尺まで剥ぎ取られた。皮が尽きた今は幹を削って使う。嫁入り婿入りの行列はこの木を避けて回り道をし、和宮が家茂へ降嫁した折も、板橋街道を通らず川口から日光街道を経て入府したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。