信玄のひと言で動いた野ざらしの鐘
どんな伝承か
小海町の松原湖畔に鎮まる諏訪神社(松原神社)の上社の境内には、重要文化財の梵鐘がある。この鐘はもと佐久郡大井庄落合の新善光寺に寄進されていたが、武田氏が佐久へ攻め入ったとき戦利品とされた。海尻まで運んできたところで鐘は急に動かなくなり、信玄が松原湖の諏訪神社の思し召しだろうから松原湖へ運ぼうとつぶやくと、びくともしなかった鐘が不思議にも動き出したという。こうして神社に納められたが、屋根の下に置くと火事に遭うといわれ、江戸時代から明治にかけて四度も火災が起きたため、しばらく外に放っておかれ、「野ざらしの鐘」と呼ばれるようになった。
原典より
これを海尻まで運んで来たところ、突然鐘が動かなくなった。—— 信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年))
『信州七不思議』は、降幡利治が昭和五十九年に著した信州各地の七不思議を集めた本である。諏訪大社上社と下社の御神渡りや筒粥に始まり、松原湖、生島足島神社、川中島古戦場、志賀高原、浄光寺、雲上寺、立石など県内各地に伝わる七不思議を、町村誌などの資料と聞き取りをもとに記す。各地の七つの事柄を箇条に掲げて関わる社寺や史跡の解説を添えるガイド風の構成で、序では越後の人が信州人の気質を評した七不思議を紹介する。