早鐘に欺かれた月毛の駒と生駒姫
どんな伝承か
昔、望月の殿様に姫が生まれた同じ日に、牧場でも美しい月毛の駒が生まれた。殿様は喜んで姫を生駒姫と名づけ、その駒を姫の乗馬とした。姫が京へ召されることに決まると駒は倒れ、何も食べずにやせ細った。修験者は駒が姫を恋していると見立て、姫が飼い葉を与えると駒は食べ始めた。心を打たれた姫は京行きを拒み、自分を駒に与えてほしいと願った。困った殿様は、城の鐘が四つから九つを打つまでに御牧七郷を三度巡れば姫を与えると駒に告げた。駒は稲妻のように駆けたが、やり遂げそうなのに驚いた殿様が刻限前に鐘をつかせたため、駒は空へ跳んで天狗岳の崖から落ちて死に、姫も城から姿を消したという。
原典より
駆けながら九つの時の鐘を聞いた駒は、大地をけって空にとび、そのまま天狗岳の崖から落ちて死んでしまった。—— 信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年))
『信州七不思議』は、降幡利治が昭和五十九年に著した信州各地の七不思議を集めた本である。諏訪大社上社と下社の御神渡りや筒粥に始まり、松原湖、生島足島神社、川中島古戦場、志賀高原、浄光寺、雲上寺、立石など県内各地に伝わる七不思議を、町村誌などの資料と聞き取りをもとに記す。各地の七つの事柄を箇条に掲げて関わる社寺や史跡の解説を添えるガイド風の構成で、序では越後の人が信州人の気質を評した七不思議を紹介する。