猟師の名を鳴くトブト鳥
どんな伝承か
五百年ほど昔、玖珠の松木という村に、飛人という腕ききの猟師が暮らしていた。あるとき口の黒い犬の黒口を連れて猟に出たまま、それきり帰ってこなかった。道に迷ったのか谷へ落ちたのか、誰にもわからない。女房は来る日も来る日も山へ入り、夫と犬の名を呼びながら捜し回ったが、やがて思い焦がれたまま死んでしまった。いまもその山には、夫と犬の名を繰り返すように鳴く鳥がいて、トブト鳥と呼ばれている。夫を捜し続けた女房の魂が、この鳥に姿を変えたのだろうと語られている。
原典より
猟師の女房のたましいがこの鳥になったのかのう。—— 大分県の民話 第2集(土屋北彦・大分県の民話) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大分県の民話 第2集(土屋北彦・大分県の民話)
『大分県の民話 第2集』は、土屋北彦による大分県の民話集である。日田の鬼大夫永季、府内の山弥長者、柞原八幡縁起、小豆研ぎ、百合若物語りなど、県内各地の長者譚・社寺の縁起・人柱・妖怪・英雄の伝説を、古代から江戸時代までの年号や現在の市町村名を添えて語り直す。三十二話を一話ずつ題を立てて並べ、多くは「です・ます」の語りで、方言による短い昔話も交じる。