神主と巫子が人柱となった摩訶の池
どんな伝承か
児玉郡美里村広木の神社の裏に、周囲四十八間ほどの摩訶の池という用水池がある。昔、この地の領主が農夫数百人を動員して堤を築かせたが、水を入れるたびに崩れ、作物まで押し流された。魔の神の祟りだという声が広がったので、役人は僧侶数十人に摩訶般若の経を唱えさせ、池の名はこれに由来するが、それでも堤はもたなかった。そのころ徳の高い神主が成功を祈ると、生きた人を二人人柱にすれば成就するという神託があり、神主は自ら穴に身を投じた。続いて同じ社に仕える巫子の少女も池に身を投げ、工事はようやく完成した。村人は二人を慕って二つの塚を築き榎を植え、これが池のそばの二子塚だという。
原典より
神主が身を躍らせると、そのあとを追って池の中に身を投じた一少女がいた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。