妊婦の家を巡り続ける地蔵
どんな伝承か
羽生市本川俣の千手院は、利根川右岸の堤防の南下にある。この寺の木彫の巡行地蔵は、一年のうち八月二十三日の一日だけ早朝に寺へ戻り、夕方にはまた巡行に出る。巡る先は主に妊婦の家で、数日から一か月ほど逗留し、安産の守り仏として枕元に安置される。明治四十三年に寺が列車の煤煙の火で焼けた時も、地蔵は巡行中で難を免れた。昔、日本回国の六十六部が旅に疲れてこの地で倒れ、里人が手厚く葬り、背負っていた笈に地蔵を納めて、巡礼と同じように巡らせているのだと伝わる。
原典より
明治四十三年列車の煤煙の火を蒙って寺は焼けたが、地蔵尊は巡行中であったので、火難を免れた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。