口から水を噴いて寺を守った山門の竜
どんな伝承か
蕨市の三学院には、山門の竜が寺を火から守ったという話がある。昔、この寺の住職が京都の格式ある寺へ移って間もないある夜、急に目を覚まして「蕨の三学院がいま火を出した、急いで水を汲め」と叫び、大勢の僧を起こして器という器に水を汲ませ、祈祷させた。ちょうどその時、三学院では火の手が上がり丸焼けになりかけていたが、山門に彫られた竜が口から水を吹き出して全焼を免れたという。編者の注では、京都へ移ったのは智積院に入った運敬で、今の山門の竜は彫刻ではなく絵だという。
原典より
ところが一方、三学院の方では、まさに火を発し全焼しようとした折、山門に彫刻してある龍の口から水を噴出して全焼をまぬがれたという。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。