鋸で切られた吉見観音の欄間の虎
どんな伝承か
吉見町御所の安楽寺の観音は吉見観音と呼ばれ、坂東十一番の札所である。観音堂の欄間に彫られた虎は左甚五郎の作といい、夜な夜な欄間から抜け出しては近くの山や田畑を荒らして農民を困らせた。そこで寺の僧が鋸で虎の背から胴の中ほどまで切り割ると、もう抜け出さなくなったという。別の言い伝えでは、虎はある年の六月に抜け出して田畑を荒らしたので住僧が後ろ足を切り、その切り口には今も血の跡が残って、毎年六月になると色が鮮やかになるという。
原典より
そこで住僧が、鋸で虎の背から胴中まで伐りわったので、それからは抜け出さなくなったという。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。