合戦の屏風から響いた矢叫びと蹄
どんな伝承か
川越市の養寿院には、秘蔵の屏風絵にまつわる話がある。川越城主の酒井河内守は、毎晩のように矢叫びや馬の蹄の音に眠りを破られていた。あまりに不思議なので易者に占わせると、城内に敵味方が入り乱れて戦う絵があり、それが災いして騒がしいのだという。調べさせると、はたしてそのような屏風が出てきた。河内守がこれを日頃信仰する養寿院に寄進すると、それきり物音は聞こえなくなり、安らかに眠れるようになったという。屏風絵に作者の名はないが、住吉具慶の作と言われている。
原典より
川越城主酒井河内守は毎夜のように、矢たけびや蹄の音でまどらかな眠りをさまされるのが常だった。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。