登戸は水害で対岸へ移った村
どんな伝承か
登戸という地名は、坂の登り口にできた部落という以上の隠れた意味は考えられず、東国にはまだいくらもありそうな古い名だと柳田はいう。坂本や坂梨が昔から駅場だったように、支度や足ごしらえで自然に往来の人が淀むので、のちにひとかたまりの部落ができた、純然たる農村ではなかったことが察せられる。現在は平場だから人が訝しむけれども、これは水害によって村を取られ、新たに川のこちら側についた空地へ引き移ったもので、住所の地筋と記憶とは絶えなかったというめでたい記念とさえ見られるという。二箇領用水の掘鑿は慶長六年前後だから、その頃にはもう登戸は坂の登り口には無かったと見られる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第3巻』を全158話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。