宮島の杓子と千畳敷
どんな伝承か
安芸の宮島で作られる杓子は、多くが県外へも売られて島の暮らしを支える一方、俗に千畳敷と呼ばれる古い大経堂では、壁や柱が願い事や名を書き込んだ大小無数の杓子で覆い尽くされ、その絵葉書までよく売れているという。これを日清戦争のときに敵を「めしとる」縁起から始まった風習だとする説を、柳田は歴史をかき乱す軽口として退ける。台所道具を初めて堂舎へ持ち込むほどの発想が兵士に生まれたとは思えないからで、宮島杓子の起源が新しくないことは誰もが認めており、藝藩通志にも道心者の誓信が作った杓子の記事が見えると述べる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。