五日市の杓子厭勝
どんな伝承か
今日の東京の市中では、戸口の上に杓子が打ち付けてあるのを到る所で見かける。宮島産と同じ小形の平杓子に、径二分ばかりの黒星を縦に三箇書いてあるものなどもあるが、普通は「くつめき御免」と書いてある。くつめきは「のどけ」、すなわち百日咳や気管支カタルのことだという。柳田が西多摩の五日市あたりで見たものには、「何の年の男又は女、十五になる迄くつめき御免」などと、念入りに趣旨が書いてあった。あるいはまた生まれ歳と男女だけを記したものや、「鎮西八郎為朝宿」などの類もあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。